はじめに
皆さんは給与明細の正しい見方を知っていますか?
ほとんどの方は手取り金額に注目しているかと思います。
自分も会社に勤めていたときはそうでした。
給与明細には各種社会保障などの重要項目もあり、これらは自身のライフプランにも深く関わってきます。
今回は、給与明細の見方がよく分からない主婦の方向けに、チェックポイントや注意点を解説をしていきます。
給与明細を見る時の参考にしてみて下さい!
もくじ
正しい見方はできてる?給与明細は重要な個人データ
給与明細とは、自分の手取りの給料はもちろん、会社を通じて払われる税金、保険料、支給される手当などが記載されている書類です。
会社から出された給与明細をチェックできるのは、当事者であるあなただけ。
細かい部分もチェックする癖をつけておきましょう。
給与明細は、最低2年は保管しておくべき!
給与明細は困ったことに間違って記載されているケースもあるので、指摘できるように最低2年間は保管しておくのが大切です。
- 「残業代の記載が間違ってる!」
- 「本来もらえる支給額が少ない!」
などの問題があった場合、給与明細を見せて間違いを示すことができます。
"2年"という期間の根拠は以下に関わるからです。
ポイント
- 未払いの給与を請求できる期間
- 失業給付の確認期間
きちんとキープするのはめんどうですが、いざという時のために残しておきましょう!
離婚の手続きにも使える
離婚調停の手続きのための証拠書類としても給与明細は使えることがあります。
離婚すると、婚姻期間中の厚生年金を分割(2分の1)で受け取れるので、夫がどれだけ厚生年金を払っているのか、給与明細でしっかり確認しておくと良いです。
ちなみに分割の請求期限は2年です。
給与明細は支給・控除・勤怠の3つで構成される
給与明細は次の3つの要素で成り立っています。
- 勤怠(出勤や有休などの勤務状況)
- 支給(労働に対して会社から支払われる金額)
- 控除(給与所得者が必ず支払う項目)
それぞれの要素の見方を知っておくと、いざという時に慌てずにすみますよ。
1.勤怠
勤怠は、実際に出勤した日数や欠席した日数に間違いがないかが重要なポイントです。
- 出勤日数
- 欠席日数
- 遅刻や早退の回数
- 有給の日数
- 残業時間
- 休日出勤日数、時間
- 有給残日数など
上記は会社によって名称が違う場合もあります。
もしタイムカードがある場合は給与明細の通りになっているか見ておきましょう。
2.支給
一番気になるのが「支給」の部分ですよね。
支給に含まれるのは基本給と各種手当になり、その額が正しいかをチェックしましょう。
基本給とは?
各種手当、インセンティブなどを除いた基本賃金のこと。
月によって変動することがありません。
手当とは?
時間外・休日・深夜労働手当、役職手当、住宅関連手当、家族手当、出張手当など。
企業独自の手当もある場合もあります。
手当の支給額のうち、
- 税金がかかるもの(課税)
- かからないもの(非課税)
があり、それらを分けて合計額が記されています。
基本給と手当に間違いはないか
支給の項目でもっとも重要なことは、
ポイント
- 基本給は契約した通りに支払われているか
- もらえるはずの手当がちゃんと入っているか
この2点です。
もしおかしいと感じたら、会社の上司、経理・総務担当に確認を取りましょう。
さらに詳しく解説していきます。
残業代がちゃんと支払われているか
残業代(時間外労働手当、超過勤務手当)は、残業した時間分が適正に支払われているかを見てください。
タイムカードがあれば照らし合わせて確認すると良いですね。
深夜までの残業、休日出勤は割増になっていることもある
明細にも「深夜残業時間」や「土曜出勤時間」「日曜出勤時間」という項目に分けられているので、これらの時間も自分が実際働いた時間と照らし合わせると良いでしょう。
みなし残業代にも要注意!
みなし労働時間制(あらかじめ規定した時間分を働いたとみなす労働時間制度)で働いている場合も要注意です。
みなし労働時間を越えて働いた場合は、超過した分の残業代が支給されなければなりません。
例えば、給与が30万(みなし残業月40時間を含む)で、50時間の残業をした場合は、会社は超過した10時間の残業代を支払わなければなりません。
手取りは「差引給与額」を見る
自分の口座に最終的に振り込まれるのが、差引支給額(手取り)です。
ポイント
「基本給がいくらか」は事前に確認を
月給(賃金の総額)ではなく「基本給がいくらか?」は事前に確認しておくべきです。
総額が高く感じても、実は基本給自体は低く、手当に残業代やノルマのインセンティブが含んでいる可能性があります。
また、基本給が低い場合はボーナスにも響くケースも。
ボーナスは「基本給×○カ月分」で計算されていることが多いため、基本給が少ないとボーナスも連動して少なくなります。
3.控除
控除では、社会保険料、雇用保険と税金(所得税・住民税など)が総支給金額から正しく控除されているかをチェックしましょう。
総支給-控除された金額=差引支給金額(手取りの金額)となり、口座に振り込まれます。
所得税
所得税とは一年間の収入に応じて課せられる税金です。
会社員の場合は、源泉徴収として仮に計算された所得税が毎月給与から引かれる仕組みになっています。
そして年末調整で再計算し正しく調整される仕組みです。
年末調整とは?
毎月源泉徴収した合計額と、本来徴収すべき所得税の一年間の総額を比較し、再度計算します。
その結果の過不足金額を正しく調整することが「年末調整」です。
もし余分に源泉徴収していた時の差額は従業員に還付されます。
所得税の額は、以下の国税庁のホームページにも記載されています。
↓パートやアルバイトの年末調整の書き方については次の記事を参考にしてください↓
-
【2019年版】パート・アルバイトの年末調整の書き方を徹底解説!
はじめに 今年も年末調整の季節がやってきましたね! 会社員が年末調整をするように、パートタイマーやアルバイトも年末調整が ...
住民税
住民税には
- 自分で支払う普通徴収(年に全4回)
- 特別徴収(給与から毎月天引きされる)
があります。
「自分で支払っているのに給料から二重に引かれている」などの間違いがないかを確認しましょう。
住民税は前年に発生した収入によって、翌年の支払い額が決められます。
介護保険料
介護保険料が徴収されるのは40歳からです。
したがって、20〜30代で介護保険料を引かれている場合は間違いになります。
介護保険の運営は市町村が行っているため、加入している保険の種類や地域によって保険料率が異なります。
詳しく知りたい時は「自分が住んでる地域 介護保険料」で検索してみましょう。
各保険料の計算は正しい?
次の各種保険の料金の記載が間違っていないかを見ておきます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険
- 雇用保険料
簡単な確認方法は、保険料が前月に比べて大きく増減しているかでチェックできますよ。
健康保険料と厚生年金保険の金額を確認するには?
健康保険と厚生年金の保険料については、計算の仕方が同じです。
計算の仕方
標準報酬月額(4月、5月、6月の総支給額の平均) × 保険料率
ちなみに月額は手当などを含めた総支給額になります。
保険料率の調べ方
保険料率の数値は、収入や住んでいる地域で変動します。
- 標準報酬月額(4月、5月、6月の総支給額の平均)によって変動する
- 住んでいる県で保険料率が違う
保険料率は、全国健康保険協会のホームページから参照可能です。
次の画像は平成31年度から定められた埼玉県での保険料額の一覧になります。
控除の「健康保険」と「雇用保険」の違い
控除欄にある以下の保険の概要について詳しく説明をしていきます。
- 健康保険
- 厚生年金
- 雇用保険
違いが分からない方は参考にしてみてくださいね。
健康保険
健康保険は社会保険の一つ。
病気やけがをしてしまったときに、一部の費用を負担するだけで医療サービスを受けられる保険です。
この健康保険には
- 病気やけがで働けなくなったときのための「傷病手当金」
- 出産や育児時に支給される「出産育児一次金」
といった国民を助ける制度があります。
厚生年金
厚生年金は、高齢になって働けなくなっても、給与の代わりに年金を受け取れる制度になります。
自営業者は対象外となり会社員だけの制度です。
自分が死亡したり障害を負ったとしても、本人や家族が年金を受け取れます。
厚生年金は、毎月の給与から控除されています。(会社と本人が折半で負担しています)
パートタイマーの社会保険や厚生年金については、以下の記事に詳しく書いているので、参考にしてくださいね。
-
パートの社会保険の加入条件を徹底解説!パートでも厚生年金に加入するの?
はじめに パートで働いていると気になるのが手取りに関わる社会保険です。 ある程度の収入/要件を満たしている ...
雇用保険
雇用保険は、雇用されて働く人のための制度になります。
パートでも労働時間などの条件を満たせば加入する義務が発生します。
加入するといくつかのメリットが受けられるのが特徴です。
- 失業保険
- 教育訓練給付金
- その他の給付金
失業した後のキャリアアップのための講座の受講や、育児休業を取得した際に現金を受け取ることができる保険となります。
雇用保険料の金額を確認するためには?
雇用保険料は、
計算の仕方
月の総支給額×雇用保険料率=雇用保険料
という計算式になります。
雇用保険料率に関しては以下の通りです。
雇用保険料率 | 会社負担率 | 自己負担率 | |
---|---|---|---|
一般の事業 | 0.9% | 0.6% | 0.3% |
農林水産・清酒製造業 | 1.1% | 0.7% | 0.4% |
建設業 | 1.2% | 0.8% | 0.4% |
以上の表のように、一般事業の雇用保険料率は0.9%になります(0.9%のうち0.6%が会社負担、0.3%が自己負担です)
農林水産・清酒製造と建設の事業については、保険料が多少違ってきます。
その他の雇用保険料率の詳細は以下を参照して下さい。
給与明細の見方で分かる注意点と対処法
ここでは、給与明細で起こりうる注意点、対処方法についてまとめてみました。
給与明細を見て「おかしいな?」と感じた際や、トラブルの対応や予防のために参考にしてみて下さい。
そもそも給与明細を貰ってない
法律上(所得税法第231条)により、企業は給与明細の発行が義務付けられています。
なので給与明細をもらえないというのは明らかに違法な行為になります。
経理担当者などに発行を依頼しましょう。
会社側がもし拒否した場合は近くの労働基準監督署に相談するのも手です。
源泉徴収表を受け取れないのも違法な行為
「源泉徴収表」を発行してもらえないのも違法行為です。
源泉徴収票とは
「一年間いくら給料を支払い、いくら税金を徴収したか」を記載した小さな紙のこと。
転職した人が現在の会社で年末調整をしてもらうときは、前職の源泉徴収票が必要です。
源泉徴収票を発行してもらえない、倒産して発行できない状態の場合は、最寄りの税務署で「源泉徴収票不交付の届書」を提出するようにしましょう。
そうすると税務署が企業に連絡してくれます。
罰金が取られている
会社は従業金のミスや欠勤などに対して、罰金を支払わせる契約を結ぶことができません。
もし罰金契約を課している会社があれば、労働基準法違反に問われる可能性があります。
ですので会社に対して罰金を受けている場合は、労働基準監督署に問い合わせるようにしましょう。
扶養なのに103万円を越えた

こんなパートの方も多いかもしれませんね。
実は扶養に入っている状態で、所得が103万以上の場合は所得税の支払い義務が生じます。
1.所得を103万円を超えると、扶養者されている人でも所得税が徴収される
103万円を超えてしまった場合、何も手続きをしなくても、年末調整で自動的に所得税が引かれることになります。
また年末調整を受けていない自営業者の場合は、自分で確定申告をする必要があります。
ちなみに、扶養を受けている人の一年間の給与が103万円以下の場合は、その一年の給与収入については所得税がかかりません。
これが俗にいう「103万の壁」と言われるものです。
2.夫の年末調整がやり直しになる
103万を越えた場合は、夫の年末調整を翌年の1月までにやり直します。
この期限が過ぎてしまった場合は、夫が自分で税務署にいって確定申告をする必要があります。
妻の所得が103万円以下が見込まれる場合、夫は「配偶者控除等申告書」を勤務先に事前に提出しておきましょう。
配偶者控除は受けられないが、配偶者特別控除は受けられる
妻の年収が150万円以下ならば、配偶者控除と同額の「配偶者特別控除」が受けられる場合があります。
(夫の所得によって控除金額が異なる、夫の所得が1,000万円超の場合は控除が受けられない)
なので年末調整をやり直しても、納付するべき所得税額は変わらず、追加徴収も行われません。
扶養家族の状況に変化が生じたら会社に届け出る
もし家族状況が変わったという場合は会社に届け出るようにしましょう。
妻の見積もり年収額が103万円以下になった場合は、配偶者控除が受けられるので、所得税の一部が戻るようになることがあります。
また子供が結婚して扶養から外れた場合、自分が障害者に該当されるようになった場合は優遇されるので、また年末調整のやり直しが必要になります。
おわりに
給与明細の見方やチェックすべきポイントを説明しました。
ポイント
- 契約した通りに支払われているか
- もらえるはずの手当がちゃんと入っているか
- 総支給-控除された金額=差引支給金額(手取りの金額)
これらは必ず確認してください。
給与明細はチェックすべきところを見過ごすと、損を被ってしまう可能性もあります。
全体をしっかり目を通しておき、二年間は必ずキープしておきましょう!

わたる

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