会社員の方なら、銀行口座に振り込まれる金額に注目しますよね。
しかし、手取り金額だけを見ていると、税金がどれだけ引かれているのか、分からないままです。
そこで本記事では、給料からどのような税金が引かれているのかを、FP資格を有する筆者が解説します。
避けて通れない税金について把握し、税金を少しでも安くしましょう。
もくじ
会社員は「源泉徴収」で税金を前払いしている
「給与所得」がある会社員は、「源泉徴収」によって税金を毎月支払っています。
源泉徴収とは、会社が個人に代わり、所得にかかる税金を給与や報酬から、あらかじめ差し引いて納税することです。
会社は、従業員の源泉徴収を行うことが法律で定められています。
しかし、なぜわざわざ源泉徴収をするのでしょうか?
- 従業員は自分で納税する手間が減る
- 国も確実に所得税を徴収することができる
上記のように、双方にメリットがある仕組みになっているからです。
なお、源泉徴収される税金は「所得税」で、後に特別徴収として差し引かれるのが「住民税」となります。
特別徴収も、会社が従業員に代わって差し引いて納税するものです。
会社員における収入・所得・控除の違い
どのような税金が引かれるのか知ったところで、税金の算出方法を見ていきましょう。
税金を計算をするには、混同しがちな「収入」と「所得」の違いを知っておくのが重要です。
- 収入:給与や賞与などの合計で、源泉徴収される前の金額
- 所得:収入(年収)から給与所得控除を差し引いた金額
次の項目でそれぞれの特徴と、課税の対象となる「所得」から、一定の金額を差し引く「控除」について解説していきます。
収入
収入とは、いわゆる年収のことです。
自分の年収を知るには、源泉徴収票の「支払金額」の項目を確認しましょう。
「支払金額」には、税金や保険料、交通費などが引かれていない金額が記されています。
所得
会社員の場合の所得とは「給与所得」が該当します。
これは、給与収入から「給与所得控除額」を差し引いた金額のことです。
つまり給与所得の金額は、
「給与所得=給与収入金額ー給与所得控除額」
という計算式で算出されます。
控除
控除とは、ある金額から一定の金額を差し引くものです。
会社員に関連する控除としては、「給与所得控除」「特定支出控除」「所得控除」の3種類があります。
給与所得控除
給与所得控除とは、会社員の収入から一定の金額を差し引くものです。
自営業者は所得から経費で差し引くことができますが、給与所得者である会社員は経費で差し引くことができません。
ですので、給与所得控除は、会社員にとっての「経費」に代わって計上できるものと言われています。
給与所得控除の金額も、源泉徴収票に記されているので確認してみましょう。
給与所得控除の額は、収入金額に応じて変動し、収入が多いほど控除率は下がります。
収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
180万円以下 | 収入金額×40%−10万円 55万円に満たない場合は55万円が控除額 |
180万円超 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
上記のように収入金額に応じて、給与所得控除の額が算出されます。
最低55万~最高195万が控除可能範囲額です。
850万を超えると、どれだけ収入が上がっても控除可能額は195万になります。
例えば、年収が300万円の場合は「300万円×30%+8万=98万」と算出されますね。
特定支出控除
「特定支出控除」とは、業務で必要な出費の中から、会社に経費として申請できなかったものを控除できる制度です。
特定支出として認められるものは、
- 通勤のための支出
- 転勤に伴う転居費
- 職務に必要な技術や知識を得るための研修費
- 職務に必要な資格取得費
- 単身赴任先から家族の元に帰った一時帰宅費
- 参考資料を購入した書籍代
- 仕事着のスーツ代
などが挙げられます。
控除額は、前の項目で解説した「給与所得控除」の半額を超えた額です。
つまり、人それぞれ控除額は違うということになります。
例えば、年収300万円の人の「給与所得控除」は98万円ですが、特定支出控除の額は49万円を超えた額です。
特定支出控除がある場合の給与所得の算出方法は、
「給与所得=給与収入ー給与所得控除ー特定支出控除額」
というように給与所得控除と一緒に差し引かれます。
所得控除
所得控除も、給与収入から差し引ける制度のひとつです。
所得控除の種類としては、以下のようなものがあります。
- 寄付金控除
- 生命保険料控除
- 医療費控除
- 扶養控除
など、全部で14種類あります。
例えば、ふるさと納税を利用したときには「寄付金控除」、生命保険料に加入している人は「生命保険料控除」が受けられます。
ただし、控除を利用するには条件があるので、自分の条件にあった控除を活用しましょう。
所得控除を増やせば増やすほど、課税所得が少なくなるので、その分税金を安くすることができます。
控除を利用して節税する方法は、以下の記事で詳しくまとめてあるので、ぜひ参考にしてみてください!
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給与所得控除と所得控除との違い
控除でも「給与所得控除」と「所得控除」は、まったく違うものです。
給与所得控除は、給与収入にあわせて一律で控除されるもので、控除額は個人の給料によって変わります。
一方、所得控除は所得から差し引くものです。
両者の計算式は以下の通りです。
- 収入-給与所得控除-特定支出控除額(ある場合)=所得
- 所得-所得控除=課税対象となる所得
先に、「給与所得控除」で差し引いてから所得を計算します。
次に所得から所得控除を差し引いて、課税所得を算出します。
そして課税所得から所得税と住民税が算出されるという流れです。
会社員にかかる税金の種類と計算方法
前半で説明したように、会社員が給料から引かれる税金には、所得税と住民税があります。
この章では、所得税と住民税の計算方法について詳しくまとめてみました。
所得税
所得税とは、1月1日から12月31までの収入から所得を計算して、そこから算出される税金です。
毎月の収入に対して所得税がかかりますが、ざっくり計算したものなので、最後に年末調整で帳尻を合わせるといった流れになっています。
年末徴収では、
- 給与に対して税金の支払いが多すぎた場合:その分が戻ってくる
- 想定よりも給与や賞与が増え、税金の支払いが少なすぎる場合:追加で徴収される
ということになっています。
所得税の計算方法
所得税の計算式は、以下の通りです。
課税所得金額 × 税率 - 税額控除(ある場合) = 所得税
詳しく算出方法を紐解いていくと、
- 課税所得金額:給与収入から「給与所得控除」「特定支出控除」「所得控除」を引いたもの
- 税額控除:税額から直接差し引けるもの
となります。
住宅ローン控除などが税額控除にあてはまります。
所得控除は差し引いてから税率がかかるため、直接差し引ける税額控除のほうが節税効果は大きいです。
所得税の税率
引用:国税庁
所得税は、超過累進税率方式で算出されるので、所得が増えると税率も高くなります。
上記画像のように所得金額によって、5%~45%の税率と控除額が定められています。
例えば、所得が300万円ならば「300万円×10%(税率)ー97,500円=202,500円」というように所得税が算出されます。
住民税
住民税は次のような特徴があります。
- 前年の所得に対して税金がかかる
- 税率は課税所得の10%が目安
- 納税先は1月1日の住所地
- 「都道府県民税」と「市町村民税」で構成される
- 所得税が0円でも住民税がかかることがある
住民税は6月から翌年の5月にかけて、前年の住民税額を12カ月分に分割したものを毎月払う仕組みです。
前年の所得が高ければ、それに伴い住民税も上がります。
納税先は、その年の1月1日の住所地に納めることになっています。
例えば、2020年の1月1日は埼玉県さいたま市在住で、2020年2月に埼玉県川越市に引越しても、1月1日に住んでいたさいたま市に住民税を納めることになります。
また、住民税と所得税は差し引かれる所得控除額に違いがあり、所得税が0円でも住民税がかかってしまう場合があります。
住民税の税率
税率は自治体によって多少違いますが、課税所得の10%がだいたいの目安です。
自分の自治体の住民税を詳細に計算したい人は、自治体のホームページを見てみましょう。住民税を算出するシミュレーションが利用できます。
住民税の内訳や安くする方法は、以下の記事に詳しくまとめています!
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会社員が住民税を安くする方法を紹介!控除・iDeco・NISAの活用法まとめ
「住民税は決まっているものだからしょうがない」と、高いと感じつつ、そのまま払っている会社員の方は結構いるのではないでしょ ...
年収が変わった場合の税金はどうなる?
昇給や転職などで年収が変化する人もいるでしょう。
そんなときに税金がどのように計算されるかを、所得税と住民税に分けて説明します。
所得税
所得税は、1年間すべての収入から、所得控除を差し引いた課税所得にかけられる税金です。
所得税は収入によって額が変わります。
ですので、新しい月収の額に応じた額の所得税が、毎月差し引かれます。
ただ、毎月の所得税はあくまで暫定の金額です。12月の年末調整によって税額は変わることを覚えておきましょう。
住民税
住民税の額は所得税と違い、前年度の収入に基づいて計算されます。
仮に退職して無職になっても、前年の所得に応じた住民税は払わなくてはなりません。
ですので退職した人は、住民税がどれだけかかるのかを把握しておくと、慌てずにすむでしょう。
例えば、
- 2019年の所得が400万円
- 2020年の年収が300万円
の場合、2020年の住民税は、前年の年収である400万円にかかってしまいます。
通常住民税は会社員の場合、6月~翌年5月にかけて、前年分の額を12カ月分に分割して差し引かれます(特別徴収)。
転職した場合の納付方法ですが、
- 転職先が決まっている場合:新しい会社で継続して特別徴収(給与天引き)ができる
- 転職先が決まっていない場合:普通徴収で自分で支払う
で方法が異なることを覚えておきましょう。
退職金(退職所得)にかかる税金
転職した場合、勤めていた会社に退職金制度がある場合、退職金を受け取ることができます。
その際、以下のポイントを覚えておきましょう。
- 退職金を受け取った場合は、「所得税」と「住民税」の2つの税金がかかる
- 一括受け取り、分割受け取りが選べる
- 受け取り方で「退職所得」か「雑所得」かに分けられる
- 税金の負担が軽くなる「退職金所得控除」制度が利用できる
退職所得控除を受けるには、「退職所得申告書」を会社側に提出すると、所得金額に応じた源泉徴収を行います。
そのため、基本的には確定申告は必要ないとされていますが、
- 他の赤字所得がある場合
- 年の途中で退職し再就職をしなかった場合
は、「退職所得申告書」を提出せず、確定申告する方が良いでしょう。
まとめ
ということで本記事では、会社員の方が納めている税金の種類と計算方法について説明しました。
差し引かれる税金には、所得税と住民税があります。
会社員の方でも、これらの税金の知識をつけておけば、節税にも繋がります。
ですので、日頃から税金の詳細はしっかり把握しておきましょう。
この記事を書いた人

- 埼玉出身のアイドルオタク。大学時代は就活に失敗してフリーターになってしまう。
その後一時は就職するも仕事を辞め、現在はフリーライター。
推しメンに多く会い行きたいという思いから節約を始める。そのなかでFPの資格も取得。
オタク活動費は必要経費。推しメンの笑顔はプライスレス。
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