「将来の年金が足りない」と感じる人が増えています。資産を増やす方法として人気なのが、iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)です。
そこで今回は、iDeCoにデメリットはあるのか、デメリットを上回るメリットはあるのかを中心に説明をしていきます。
iDeCoをこれから始めようと思っている方も、そうでない方もぜひ参考にしてみて下さい。
もくじ
iDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)とは、決まった額を自分で積み立て、その資金を自分で運用することで、老後の備えをする公的年金制度です。
国の年金だけでは不安を感じる人や、老後の資金に余裕が欲しい人が主に利用しています。
厳密に言うと、iDeCoは「企業型」と「個人型」の2種類があります。(出典:iDeCo公式サイト)
企業の場合、退職金制度として、企業型のiDeCoを導入していることがあります。

iDeCo最大のメリットは、税制優遇措置があることです。
積み立てた掛け金(5,000円~)や、運用して得た利益は全額所得控除されるので、普通に銀行に預けるより大きく節税できます。
ただし、iDeCoに加入する以前の年金履歴に、「未納期間」や「免除期間」がある場合は、iDeCoに加入できないので注意しましょう。
iDeCo(イデコ)のメリット5つ
iDeCo(イデコ)には、以下のようなメリットがあります。
- 3つの税制優遇がある
- ライフプランに合わせて掛け金を設定可能
- リスクに合わせて商品を選べる
- 投資信託の購入手数料がかからない
- 転職・退職時に資金の持ち運びができる
詳しく解説していきます!
3つの税制優遇がある
「積み立てなら定期預金と何が違うの?」と感じる人もいますよね。
iDeCoは単に積み立てるだけでなく、さらに税優遇のメリットが加わります。
税金が安くなった分、資金を多く投資に回すことも可能になります。
掛金の全額が所得控除の対象
iDeCoは、掛金の全額が、所得控除(所得の合計金額から、一定の金額を差し引く制度)の対象になります。
毎月の掛金を1万円として、簡単にシミュレーションしてみました。
1万円すべてが控除の対象になるので、所得税10%、住民税10%だと仮定とすると、
- 所得税の1カ月あたりの課税額:1万円×10%=1,000円
- 住民税の1カ月あたりの課税額:1万円×10%=1,000円
- 1,000円×12カ月=12,000円×2(消費税と住民税)=24,000円
となるので、本来徴収されるはずだった、年間2万4,000円の税金が減額されます!
2万4,000円を、30歳から60歳まで積み立てたとすると、2.4万円×30年= 約720,000円を節税できることになります!
運用益は非課税
普通の金融商品では、運用で得た利益には、20.315%の税金が課税されてしまいますが、iDeCoの場合はこれが非課税(下の表の青の部分)になります。
引用:楽天証券
こちらは、楽天証券のiDeCoのシュミレーションの結果です。(35歳から毎月2万円を積み立てて年利が3%の場合)
積立金額が600万円に対して、運用益は292万156円という結果が出ました。
この場合、iDeCo以外の他の方法で金融商品を運用すると、584,031円の税金が引かれます。
しかしiDeCoの場合、584,031円の税金はゼロになります!

受け取るときも控除が受けられる
iDeCoは、
- 年金(5年以上20年以下の期間で分割して受け取る方法)
- 一時金(60歳〜70歳の間にまとめて受け取る方法)
- 年金と一時金の併用
上記のいずれかの受け取り方法を選べます。
上記の中で、「一時金」を選択した場合、「退職所得」として扱われるため、退職所得控除を適用できます。
「年金」として受け取る方法は、いわゆる「老齢年金」と同じとみなされ、「雑所得」として課税所得の対象となります。
ただし、「公的年金等控除」が適用できるので、一時金と同じく税負担は軽減されます。
ライフプランに合わせて掛け金を設定可能
iDeCoは、月々5,000円の掛け金額から始められ、掛け金額は1,000円単位で自由に設定できます。
そのため、資金が心配な人でも、生活に合わせて無理のない負担で始められるのが利点です。
さらに、平成30年の1月から、年1回以上で任意に決めた月に、掛け金をまとめて積み立てることが可能になりました。
例えば、1月は1万円、2月は2万円といったように、自由にスケジュールを立てられます。
ただし、限度額内で最大12回までになります。

リスクに合わせて商品を選べる
iDeCoは、金融機関にもよりますが、選べる金融商品が10〜30個くらいに限定されているため、商品が選びやすいのも魅力です。
具体的には、
- 元本確保商品(期限が来たら、利息と元利金の合計金額が戻ってくる金融商品)
- 投資信託(投資のプロが代わりに運用を行う金融商品)
上記の商品があるので、リスクに合わせて好きな商品を選べますよ。
元本割れのリスクを負担に感じる方は、「元本確保商品」である「定期預金」などを選ぶと良いでしょう。
投資信託の購入手数料がかからない
iDeCoの運用商品にあるほとんどの投資信託は、「購入時」と「解約時」の手数料がかかりません。
一般で購入する投資信託は、購入時に手数料がかかるものもあり、これらの購入手数料をかけたくない人は、iDeCoを検討してみてください。
転職・退職時に資金の持ち運びができる
転職・離職した場合、iDeCoの年金資産を「移換の手続き」をすることで、持ち運びができます。
移換の手続きとは、iDeCoによって積み上げた年金資産を、別の会社のiDeCoに移行できることです。
必要な要件を満たした場合は、他の年金制度(厚生年金基金、確定給付企業年金等)からの資産の引き継ぎも可能です。

iDeCo(イデコ)のデメリット8つ
ここからは、iDeCoのデメリットを解説していきます。
デメリットを十分に把握してから、利用するか決めましょう。
注意ポイント
- 原則60歳まで引き出せない
- 元本割れのリスクがある
- 口座手数料がかかる
- 自分で金融機関を選ぶ必要がある
- 掛け金の上限金額が決まっている
- 会社員は状況によって上限額が異なる
- 専業主婦は節税効果が受けにくい
- 加入できない人もいる
原則60歳まで引き出せない
iDeCoは、原則60歳まで、掛金や運用益を引き出せません。
勤務先を退職したとしても、原則60歳までは継続する必要があります。
ただし、以下の場合は例外として、解約することができます。
- 脱退一時金を受ける場合
- 加入者が怪我や病気で障害を負った場合
- 加入者が死亡した場合
出典:iDeCo公式サイト
住宅購入や子どもの教育費がかかる人など、60歳までに大きな支出の予定がある人は、加入する際によく考えましょう。
元本割れのリスクがある
iDeCoの金融商品は、あくまでも「投資」に該当するため、元本割れ(元のお金が減る)のリスクもあります。
中には、リスクの低い「元本保証」の金融商品はありますが、掛金を多く増やすことはできません。
- リスクは高いけれどもリタ―ンが高い商品
- リスクは低いがリターンが少ない金融商品
上記を組み合わせるなどの工夫が必要です。
ただし、どの商品を選ぶかは、個人に完全に委ねられています。
投資の初心者なら、ある程度自分で判断できるまで、投資の勉強をするか、プロのアドバイスを受けるのがおすすめです。
口座手数料がかかる
iDeCoで忘れてならないのが、「手数料」と「維持費」の費用です。
- 口座を開設する際に支払う加入時手数料:2,777円
- 事業委託をしている金融機関に対しての手数料:毎月167円
加入時手数料は、iDeCoを管理している「国民年金基金連合会」に支払うための費用で、どの金融機関で口座を開設しても必要です。
金融機関への手数料も、初年度には5,000円程度〜1万円、2年目以降は年間2,000円〜7,000円ほどかかります。
自分で金融機関を選ぶ必要がある
個人型のiDeCoの場合、自分で金融機関を選び、口座開設手続きを行う必要があります。
加えて、運用する金融商品も自分で選ばなくてはなりません。
金融機関ごとの違いなど、自分で情報を集めなければならず、面倒だと感じる人もいるでしょう。
ただし、企業型のiDeCoの場合、金融機関の選択や加入手続きは、会社が行う場合が多いです。
掛金の上限金額が決まっている
iDeCoは20歳から60歳未満と加入資格が広いのですが、それぞれの状況で掛金の上限金額が決まっています。
以下は、加入者別の最大掛金の違いです。
職業 | 最大掛金月額 |
---|---|
自営業(第1号被保険者) | 最大掛金月額:6.8万円 |
専業主婦(第3号被保険者) | 最大掛金月額:2.3万円 |
サラリーマン(第2号被保険者) | 最大掛金月額:2.3万円 |
公務員(第2号被保険者) | 最大掛金月額:1.2万円 |
以上のように第1号、第2号、第3号被保険者で、掛金の上限が違います。
自営業は厚生年金がもらえない分、掛金が多めになっています。
公務員は年金払い退職給付等がある分、掛金が少なくなっていますね。
企業年金のない会社員と専業主婦は、資金に余裕があったとしても、2.3万円までしか拠出(積み立て)できません。
会社員は状況によって上限額が異なる
第2号被保険者である会社員の場合は、確定拠出年金や確定給付企業年金、厚生年金基金に加入しているかどうがで上限が異なります。
年金の加入状況 | 上限金額 |
---|---|
企業年金がない場合 | 月額2.3万円(年額27.6万円) |
企業型DCに加入している場合 | 月額2万円(年額24万円) |
DBと企業型DCに加入している場合 | 月額1.2万円(年額14.4万円) |
DBのみに加入している場合 | 月額1.2万円(年額14.4万円) |
「DC」は確定拠出年金のこと、「DB」は確定給付企業年金・厚生年金基金のことをいいます。

専業主婦は節税効果が受けにくい
収入のない専業主婦の場合、そもそも税金が徴収されないため、iDeCoの節税のメリットは出にくいです。
仮に、働いて年間収入が130万円を越えた場合、今度は社会保険の扶養から外れるため、専業主婦としての優遇を失う可能性もあるでしょう。
投資に関する知識が多少必要になる
iDeCoは、自分で金融機関を選び、運用商品を選択するため、投資に関する知識が多少必要になります。
「リスクが高い商品と低い商品を組み合わせる」など、細かく運用方針を決定しなければならないため、ある程度投資の知識が必要です。
加入できない人もいる
加入の対象となる人が多いiDeCoですが、中には加入できない人もいます。
- 国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)している人
- 農業者年金の被保険者
- 勤めている企業で企業型確定拠出年金に加入している人(企業型確定拠出年金規約で、個人型同時加入を認めている場合は加入できる)
- 60歳以上の人
- 海外在住の人
上記に当てはまる人は、別の資産運用方法を考えましょう。
iDeCo(イデコ)が向いているのはこんな人
メリットの多いiDeCoですが、どのような人にもっとも向いているのでしょうか。
iDeCoに向いている人は、以下の通りです。
- 資金に余裕があり老後資金を貯められる人
- より多くの節税効果を受けたい人
- 会社員や公務員で将来に不安がある人
- フリーランスや自営業者
- 20代や30代など年齢が若い人
資金に余裕がある人は、「わざわざiDeCoで年金を増やす必要はない」と思うかもしれませんね。
しかし、掛金の全額が所得控除になるので、掛金が多ければ多いほど節税効果が得られます。
また、フリーランスや自営業者は、厚生年金に加入できない分、iDeCoの月額の掛金額は6.8万円までと優遇されています。
iDeCoは、60歳までの長期の資産運用なので、20代など年齢が若い人は運用できる期間が長いです。
つまり、長い間節税効果を得られるメリットがあるでしょう。
iDeCo(イデコ)でメリットを受けにくい人
iDeCoのメリットを受けにくい人は、以下のとおりです。
- 専業主婦や103万円以下の収入のパートタイマー
- 無職の人
- 貯蓄が少ない人
- 50代後半の人
専業主婦や、収入が103万円以下のパートタイマーなどで扶養に入っている場合は、年金や健康保険料が徴収されないため節税効果を多く受けられません。
無職の人は、納めるべき所得税や住民税が基本的にないので、節税効果の恩恵を受けることができません。
iDeCoで拠出したお金は、60歳になるまでに引き落とすことができないので、手持ちの現金や貯金が少ない人や、大きな支出を控えている人には不向きです。
またiDeCoの性質上、60歳に近い人ほど資産運用ができる期間が短くなり、メリットも減ってしまいます。
iDeCo(イデコ)の始め方
最後に、個人型のiDeCoの始め方について解説します。企業型のiDeCoについては、勤め先の担当部署に確認してみてくださいね。
step
1口座管理手数料が安い金融機関を選ぶ
step
2書類を取り寄せる
step
3書類が届くまでに準備する
step
4申し込み書類が届いたら返送する
これらの手順の詳細について順に説明します。
1.口座管理手数料が安い金融機関を選ぶ
iDeCoを始めるにあたり、口座管理手数料が安い金融機関を選ぶのがポイントです。
口座を持っていない銀行でも、申し込み可能です。
掛金は指定した口座から(申し込んだ銀行以外でも可能)、引き落としされます。
2.書類を取り寄せる
金融機関を選んだら、申し込み書類を取り寄せましょう。
取り寄せる方法は以下の3つです。
ポイント
- ホームページから資料請求
- コールセンターに電話する
- 金融機関の窓口に行く
iDeCoは将来に備えて長く積み上げていくものなので、特に初心者なら、コールセンターを利用するか、金融機関の窓口に行くのがおすすめ。
電話・対面で相談や質問ができれば、不安や疑問も解消しやすいはずです。
申し込み時に有効となる、「本人確認書類」についても、尋ねておきましょう。
3.書類が届くまでに準備する
申し込み書類が届くには数日かかるので、その間に準備を進めておくのがおすすめ。
必要なもの
- 基礎年金番号の確認
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、住民票や印鑑証明などのコピー)を用意する
- 掛け金額を決めておく
基礎年金番号は、「年金手帳」や「年金定期便」に記載されていますが、会社員の方は、勤務先の総務関係部署に問い合わせることでも確認できます。
不明ならば、お近くの年金事務所でも確認しましょう。
本人確認書類は、金融機関によって異なるので注意が必要です。
掛金額は年に一度変更することができますが、無理のない範囲で決めておくのがおすすめです。
4. 申し込み書類が届いたら必要事項を記入後、返送する
書類を返送する際は、以下のことに注意しましょう。
- 第1号被保険者(自営業)・第3号被保険者(専業主婦・主夫):「加入申出書」と「本人確認書類」を返送する
- 第2号被保険者(会社員):勤務先で、加入対象者であることを証明してもらう
会社員の方は、まず送られてきた規定の用紙を、勤務先の担当部署に記入してもらいましょう。
その後に、
- 証明書
- 加入申出書
- 本人確認書類
以上の書類を返送します。
添付書類の不備・記入漏れ・誤りがある場合、手続きが遅れることがあるので注意しましょう。
おわりに
ということで今回は、iDeCoについて説明しました。
iDeCoの節税効果のメリットはとても大きいですが、60歳になるまで引き出せないなどのデメリットもあります。
メリット・デメリットを把握したうえで、利用するようにしましょう。
この記事を書いた人

- 埼玉出身のアイドルオタク。大学時代は就活に失敗してフリーターになってしまう。
その後一時は就職するも仕事を辞め、現在はフリーライター。
推しメンに多く会い行きたいという思いから節約を始める。そのなかでFPの資格も取得。
オタク活動費は必要経費。推しメンの笑顔はプライスレス。
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